狂おしいまでの



 ※ カイトが半ヤンデレ?です



「マスター」
 今は俺の腕の中にいるマスターを呼ぶ。もぞりと居心地が悪そうに身じろぐのが伝わる。
「カ、イト。何、これ」
 俺の腕を手をかけるが、外そうとはしない。抵抗する気もないらしく大して力も入っていなかった。
 言葉は無視してマスターの肩に顔を寄せた。毛先が頬をくすぐる。
 腕の中のマスターは、予想していたよりもずっと細い。ねえマスター、ちゃんと食べてますか? 身体壊したら元も子もないんですからね。

「マスター。マスター」

 大好きなんです。
 その言葉が、感情が、あなたに抱く思いが全て何処か曖昧だけれど、あなたが好きです。

 実はとても手触りのいい髪が好きです。
 ギターを弾くときの指先が好きです。
 ディスプレイを見る目が好きです。
 様々な言葉を紡ぐ唇が好きです。
 よく組んでいる脚が好きです。
 すぐ赤くなる耳が好きです。
 ふかい色の瞳が好きです。
 白いうなじが好きです。

 あなたが好きです。
 全てが好きです。

 言い尽くせないほどあなたが好きです。


 頭のどこかが警鐘を鳴らしているのが聞こえる。
 0と1が支配するシステム。無機物と有機物で出来た自分。――あなたにはかなわない。
 けれどこの気持ちは嘘ではないと言い切りたい。そうでないならばこのこみあがるようなものは何?

「カイト……」
 ああ、せめてあなたが俺だけを呼んでくれるならばよかったのに!
 今"彼女"はスリープ中だ、だから今ここにいないだけ。
 俺だけを見て欲しい。
 ああ、マスター。どうかお願いです。

「どうしたんだよ、カイト。何があった?」

 今だけは俺のものになってください。

 腕の力を強めると、驚いたようにマスターが小さく息を吐く。
 ようやくマスターが俺に身体を預けてくれた。寄りかかる重さが、愛おしい。



up09/01/03
"好きだ"と言葉に出来ない俺の弱さを叱ってください。(その先がどうなってしまうか、怖いんです)