私は、マスターとお兄ちゃんと一緒に暮らしています。マスターというのはさんという人で、でも私たちはいつも"マスター"と呼んでいます。だってマスターはマスターだもの!
マスターはとてもいい人です。ちょっと物事をずばずば言う人だけれど、それは必要だから言うんです。レッスンの時は手を抜かないでしっかりレッスンしてくれます。カッコイイと私は思うんだけれど、まだ彼女はいないみたい! いないんですかと前に聞いたらとても渋い顔をされました。あれは何だったんだろう……?
お兄ちゃんはVOCALIDシリーズの初代であり、お兄ちゃんであり先輩でもあるんです。私はネギがあれば幸せだけど、お兄ちゃんはアイスが大好き。
でも私は、お兄ちゃんが何よりも(ダッツのアイスよりも)マスターが好きという事を知っています。でもお兄ちゃんの"好き"は私がマスターに対して持っている感情とは違うのも知っています。
もちろん私もマスターが好き。でもそれはいわゆる、家族愛という括りに入るものです。マスターが私に本当の家族のように接してくれるのが嬉しくて、私は作り物なのにと思うけれどそれがとても嬉しいんです。だから私も、マスターが本当の家族のように接したくなるんです。家族のおにいちゃんとして、そしてマスターとして私はさんが好きです。
お兄ちゃんはそういう括りではなくて、別の"好き"をマスターに抱いています。でも私たちはボーカロイド、機械ですから越えられないボーダーラインがあります。お兄ちゃんは拒絶されるのが怖くて、なかなか言い出せずにいます。
――なんでここまで分かるかって? 同じパソコンにインストールされてるもん! 私だってやるときはやるんだから。
そもそも、私たちにそんな"想い"まで抱かせてしまうプログラムが恐ろしくもあります。でも、だからこそ、こうして幸せだと感じられるのだけど。
今日はマスター、一日中外へ打ち合わせに行っています。ちなみにお兄ちゃんはスリープに入ってしまっているので、私一人リビングであれこれ考えています。
朝マスターを送り出すとき、「いってらっしゃい」と言うお兄ちゃんに「行ってきます」と返したマスターの笑顔はとても綺麗でした。みとれてぼーっとしていたらマスターは出て行ってしまって、結局言いそびれてしまったのが残念でした。ちょっと遅れそうで急いでたんだから、仕方ないけど。
お兄ちゃんは、私がお兄ちゃんがマスターを好きって事を知らないと思ってる。私だってお馬鹿じゃないんだから! マスターの行動一つ一つに喜んだり、悲しくなったりしてるのを見てると本当に好きなんだなと思う。でも伝えるのが怖いの。分かる気がする。
よく考えるの。私はマスターもお兄ちゃんも大好き。だからなにかしてあげたい。
私に出来る事は何だろう? 歌う事、綺麗にハモる事、励ます事、手伝う事。いろいろあるけれど、いまいちピンとこない。
私に出来る事って、なんだろう?
(ふたりとも幸せになってほしいの)
(ああ、簡単な事じゃない)
up10/05/05
我が家のミクはお馬鹿だけど賢い子。そして彼女は行動するのです。
タイトルお借りしました 群青三メートル手前