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ねえマスター。"あの世"って、一体どんな所なんでしょうね。機械の俺たちにはきっと行けない所なんでしょう。
棺へ沢山の楽譜を入れて、火葬場へ。
白い花と楽譜に埋もれ瞼を閉じる姿は、まるで眠っているようでした。遺影の作られた笑顔よりも、もっとずっとマスターらしい。
今日はすごくいい天気なんですよ。空の青さが目に沁みるようです。
その青い空に向かって、一筋の煙。でもその煙が雨となり雲となり、巡り巡ってくれるならそれはそれでいいかもしれない。
もし今日の天気が雨だったなら、葬式らしいどんよりとした雰囲気になったのかもしれません。でもあんまりにもいい天気なので、ちょっと拍子抜けです。
マスター。
音にはせず、口を動かすだけ。
貴方が居た時間は素晴らしく幸せでした。
共に過ごせた時間は忘れません。
止まった涙が再び溢れてきそうで、俺は瞼を閉じる。
誰もいないはずの正面、ふと人の――よく知る気配――ああ、これは
「カイト」
頬に触れる感覚。瞼が震える、目を開けられない。
「ありがとう」
優しく指先が俺の輪郭を撫でて、離れる。
感覚が消えたのを感じて目を開けるが、やはり目の前には誰もいない。
でも、あの声は、あの手はマスターでした。
ありがとうだなんて俺の方が言う台詞です。でも、ありがとうございます。これで俺、貴方の居ない将来もやり過ごせる気がします。
頬に残る感覚が懐かしすぎて、また涙が溢れました。
(……我が侭ですみません。でも、)
もし願えるのなら、また貴方と出会いたい。